'97-11月 収穫祭

明日香の棚田で明日香鍋をつつくの巻

収穫祭のためだけに特別あつらえた日和のような、ぽかぽかした小春日和だった。我々の仲間が収穫したお米の切り株が残る棚田一面にブルーシートを延べての収穫祭野外パーティ。前日の勤労感謝の日は寒かったので、気が気ではなかったと、棚田ルネッサンス実行委員会の豊田会長も挨拶でホッとした表情だった。本当に一年間、稲渕大字の総代でもある豊田さんを始めとする大字のインストラクターの皆様には、おんぶにだっこで米作りの手ほどきをしていただいて、ここ何十年もなかった思い出深い一年になったこと、感謝の気持ちで一杯になった。

一期生、二期生の代表がそれぞれに、都会からきたものは、えてして自分のエリアだけを守ってしまう習慣が身に染みついてしまっている面があるが、明日香通いを重ねるほどに、助け合いながらの田圃というものを学ぶことにも意義があるのではないかと、来年への思いを述べた。因みに一期生代表は濱西さん、二期生代表は我が女房が一年の感想を述べた。

この後約一時間、班別にディスカッションをしたが、この班でのミーティングを一年の最初からやりたかったという反省が、みんなの口からでた。たぶん一年やってみて、都会人的な殻が破れてきたのだと思う。班でお昼を一緒に食べたりしたら、いろんなことが話し合えて、明日香へ通って来ている人、家族同士もっと仲良くなれただろうという思いはみんな一緒だったのだ。

来年二年目の人も、三年目の人も、来年はもっと班ごとのミーティングを大切にし、いろいろな情報交換や、作業の助け合いがもっと活発になるのは間違いないところだ。その上で、地元の里山の手入れや、各種行事にももっと積極的に参加し、明日香ならではの情報をもっと知る対という気持ちもみんなが多かれ少なかれ持っていた。例えばカブトムシなど、都会では一匹何千円もする貴重品になっているが、明日香では蝉と同じように普通にその辺にいる昆虫だった。そういうふるさとを持てる、自然と共に生きることのすばらしさを、自然の中で汗を流すことの爽快さを、みんなが体で、五感で知覚しつつあることがよく分かった。

各班ごとのまとめも似たようなものだった。班の構成を経験者と新しい人をできるだけ混ざるようにすること、自然体を大切にあまり細かいことに拘泥しないでやっていこうということなど、来年につながる意見が集約された。久しぶりに真剣なミーティングに参加し、ほぼみんなに満足のいく集約がなされたのは、それだけ長丁場で共通の体験をしてきた成果といえるだろう。

班のミーティングのエンジンをそのままに、野外の大宴会が始まった。みんなで持ち寄ったバラエティに富むオードブルがたっぷりとある。圧巻は村長差し入れの地鶏入り明日香鍋。大釜に明日香の幸をたっぷりとぶち込んで牛乳で煮た鍋は、薄味だが素材の味がかめばかむほど滲んでくるようだった。あまりのいい陽気の上に、鍋で暖まり、お酒も入って、ボクは早々とダウン。後の記憶は女房に支えられ、自分で作ったかかしをかかし供養の火にくべた場面くらいしかない。女房が運転する車で我が家の近くにくるまでほとんど記憶が飛んでいるというような酔いを久しぶりに経験した。

半分寝ながら杯だけは傾け、なにやら訳の分からないことを言っていたらしいのだが、全く記憶にない。もし、偉そうなことを言ってお気に障っていたら、どなた様もごめんなさい。次からは気を付けますので。(1997.11 by 陽)